1.はじめに
2023年末に、ドローン事業の促進のため、国土交通省によりレベル3.5飛行制度が新設されました。この制度により、一定条件を満たせば、目視できない範囲でも、移動中の車、列車や船舶の上空を一時的に横断する飛行ができるようになりました。
徐々に規制が緩和されてきていて、ドローンの活躍がますます進んでいくことが予想されます。
レベル3.5飛行制度により物資輸送が注目を浴びていますが、農薬散布や測量等の農業土木の分野ではすでに活躍しており、様々な業界でドローンの利用が広がっています。そのなかでも、警備業界とドローンの相性はよく、今後のさらなる活用が期待されています。
2. いま、警備業界でドローン活用が期待されている理由とは?
2-1. 警備の担い手不足の解消
警察庁が公表している資料「令和4年における警備業の概況」によれば、警備員全国58万人のうち、60~69歳が26.9%、70歳以上が19.2%を占めており、警備員の高齢化(深刻な人手不足)が進んでいます。また、現場によって、24時間体制である、屋外で長時間拘束されるなど、仕事環境がきつい、キャリアマップが描きにくい、といった要因で若年層が少ない年齢構成となっているようです。
2024年2月度の保安業の有効求人倍率は7.16倍であり、全体の有効求人倍率が1.26倍であることを考えると、警備業界はかなりの人材不足であることが分かります。
また、近年の警備は、法人はもちろんのこと、個人の需要も高まっており、人手不足に拍車をかけています。
こうした人手不足の深刻化を背景に、新技術を使った機械警備を導入することによる警備員の負担軽減が期待されています。
2-2. ドローンによる警備の強み
今やどこでも見かける監視カメラですが、カメラをどこかに固定する必要があるため、どうしても死角が発生してしまいます。一方で、ドローンは、自由に移動ができてカメラも動かせるため、死角ができにくく、広範囲を巡回・監視する業務に適しています。
また、空中を移動するため、人が行くのが危険な箇所や海の上であっても巡回が可能です。不審な箇所や気になる箇所にもすぐに行くことができます。
また、ドローンはカメラ以外のセンサー類も搭載でき、夜間でも問題なく監視できます。さらに、警備と同時に、カメラやセンサによる混雑状況の把握や、施設の稼働状況の把握(施設点検)など、追加で付加価値のある情報も取得することができる点もメリットとなります。
巡回コースを設定し自動飛行させたり、複数台のドローンで監視することで、広い範囲を限られた人員で効率的に警備することも可能になるでしょう。
3. ドローン警備の現状と将来性は?
現状、工場や発電所内の巡回警備、敷地内監視などですでにサービスを提供している企業が複数あります。また、ドローン警備のさらなる利用拡大に向け、様々な企業が実証実験を行っています。
・スタジアム警備の実証実験(KDDIグループ、SECOM、東大阪市)
・屋内警備の実証実験(ALSOK)
・大学構内の巡回実証実験(ALSOK、立命館大学)
・医薬品工場でのドローンによる夜間自動巡回(武田薬品)
また、2024年2月には、東京・台東区浅草の浅草寺で行われた「節分会」で警察庁が都内初となるドローンによる警備を実施しています。また、4月には、ドローンを専門とする「小型無人機係」が警視庁警備部に新設されたという報道や、選挙遊説などでの要人警護の強化のため、全都道府県警で上空から現場を監視する警護用ドローンの配備が完了した、との発表もありました。
また、「ドローン警備事業者認証ガイドライン」「警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン」などの整備検討も進められていますので、今後、警備業界でのドローンの利用拡大が望め、需要は高まっていくでしょう。
参考リンク:各種ガイドライン(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド)
4. ドローン警備には資格が必要?
ドローン警備は、「機械警備」にあたるため、「警備員指導教育責任者」を配置した環境下で「機械警備業務管理者資格」を持つ人が操縦する必要があります。
機械警備とは…監視カメラや赤外線センサーをはじめとしたセンサー等の機械を利用し、機械と人が連携した警備のこと。
警備の資格が必須であるとともに、ドローンの操縦ができることも必要です。
ドローンの資格には民間資格と国家資格(無人航空機操縦者技能証明)があります。
ドローンを飛行させること自体に、必ずしも資格が必要ではありませんが、飛行させる環境に応じて、国交省から飛行許可をもらう必要があります。現状、国が認定した民間資格と国家資格のどちらも、持っていることで飛行許可審査の手続きが一部省略・簡易化できるというものになっています。
しかし、2025年12月5日以降、民間資格の運用が終了になることも発表されており、今後、ドローンの資格取得を検討される方は、国家資格をおすすめします。
また、業務としてドローンを扱うには、信頼性も必要になるため、操縦技術や知識、安全に対する意識の高さを示すことができる国家資格は有効です。
ドローンの国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」には、一等・二等、基本・限定変更など種類がいくつかあります。
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